TCFD提言に基づく情報開示

株式会社イワキ(以下、「当社」)は、「常に最前線で産業を支え、社会の発展と人々の幸福に寄与する。」の経営理念のもと、産業界で幅広くケミカルポンプ・流体制御機器をご利用いただくことで社会に価値を提供してまいりました。

企業を取り巻く環境が大きく変化する中、社会課題の解決による持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上を両立させることの重要性はより高まっています。

特に気候変動対応については、持続可能な社会の実現のために、当社が配慮すべき重要な経営課題の一つであると認識しております。当社は環境に配慮した事業活動への取り組みの一環として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同するとともに、気候変動に起因する事業等のリスク・機会の把握と適切な情報開示を行います。

ロゴ:TCFD

ガバナンス

当社は気候変動課題を含むサステナビリティの観点を踏まえた経営を推進するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。
本委員会では、サステナビリティに関する方針の策定や気候変動対応をはじめとした各種課題への取組状況の確認、施策などについて審議を行ってまいります。
また、サステナビリティ委員会で審議された内容は取締役会に対して適宜、提言や報告を行い、取締役会ではその対応について必要に応じて審議・決議を行うとともに、取締役の職務の執行を監督いたします。

取締役会で決議または報告された気候変動課題に関する事案の例

  • 2022年 4月 サステナビリティ委員会設置
  • 同年 10月 温室効果ガス排出量削減目標の設定
  • 同年 12月 TCFD提言への賛同表明
  • 2023年 2月 TCFD提言に基づく情報開示
  • 同年 5月 サステナビリティ基本方針の策定

戦略

気候変動に起因する当社事業への影響を考察するために、

  • 1.5/2℃シナリオ(※1):脱炭素社会を実現するために厳しい政策・法規制が敷かれるシナリオ
  • 4℃シナリオ(※2) :現状を上回る気候変動対策が行われず異常気象の激甚化が顕著に表れるシナリオ

を参考に、定性・定量の両面からシナリオ分析を行いました。

※1「1.5/2℃シナリオ」参考:IEA Net Zero Emissions by 2050、Sustainable Development Scenario、RCP2.6
※2「4℃シナリオ」参考:IEA Stated Policies Scenario、RCP8.5

考察の結果、いずれのシナリオにおいても、気候変動起因による主なリスクとして、洪水や高潮による自社拠点への被災やサプライチェーンの寸断によって売上機会が減少する可能性を認識しております。
一方、1.5/2℃シナリオにおいては、機会として、脱炭素社会への移行に伴う二次電池をはじめとした新エネルギー分野のニーズに当社製品が適応することで、売上機会が増加する可能性が高いことを認識しております。
当社では、新エネルギー市場を強化市場としており、今後も事業拡大など、積極的な取り組みを推進してまいります。

対象 1.5/2℃シナリオ 4℃シナリオ
政府 ■炭素税の導入や、再エネ・省エネに関する政策など、環境関連対応を推進。 ■気候変動対策は現状維持。
■異常気象への対応支援。
投資 ■ESG投資がスタンダードに。
■環境経営情報を投資先選定で重視。
■環境配慮よりも収益性重視。
■投資先選定ではBCP対策有無を注視。
気象 ■異常気象の激甚化は4℃に比べ緩やか。 ■異常気象の激甚化による物理的なリスクの顕在化。
エネルギー ■再生可能エネルギーが普及。化石燃料由来のエネルギーは減少。 ■化石燃料由来のエネルギーが主流。高効率な発電技術が進展。
企業 ■政策・規制に伴うエネルギー価格の上昇により、操業コストが増加。
■政策・規制に伴う原材料の変化により、原材料コストが増加。
■異常気象による自社設備への被害が発生。
■平均気温の上昇による従業員への健康被害が発生。
顧客 ■使用製品に関し、価格・性能に加え環境配慮の有無を重視。
■再エネ・省エネに寄与する製品やサービスの進展。
■使用製品に関し、価格や性能を重視。
■サプライチェーンに対して、BCP対策を要求。
区分 項目 事象 時期※3 リスク 影響度※4
内容 対策 1.5/2℃
シナリオ
4℃
シナリオ
移行
リスク
政策

規制
GHG排出に対する炭素税などの法規制の公布 中期

長期
■当社事業活動に伴うGHG排出(Scope1,2)に対してのカーボンプライシングが発生。 ■主要拠点にて、再生可能エネルギー由来の電力メニューを積極使用。
■省エネ設備の導入による電力削減。
★★
再エネ政策やエネルギーミックスの変化による電力価格の増加 中期

長期
■電力価格の増加に伴う操業コストが増加。 ■省エネ設備の導入による電力削減。
資源循環に関わる法規制の強化 中期

長期
■プラスチック規制やリサイクル規制により、原材料コストの変化や代替材料への変更コストが発生。 ■複数社購買の強化。
■廃プラ・鉄・非鉄を含む廃棄物のリサイクル活動。
■製品・部品のリサイクル検討。
★★
★★
技術 脱炭素に資するための製造プロセスの変化 中期

長期
■脱炭素に資するため半導体製造などで部品の最適化が進み、製造過程が短縮され、ポンプの需要が減少。 ■脱炭素(省エネ、省資源など)製品・技術の開発推進。 ★★
★★
市場 サプライチェーン全体での脱炭素化に伴う行動変化 短期

中期
■顧客企業より脱炭素化を求められ、製品生産における脱炭素技術・設備導入などの対応コストが発生。 ■自社製造プロセスの脱炭素化および効率化に伴うリスク軽減。 ★★
評判 ステークホルダーのESG/サステナビリティに起因する行動変化 短期

長期
■気候変動を含むESGへの取り組みが不十分である場合、顧客や投資家からのレピュテーションが低下する。
■採用や雇用環境にも悪影響が発生。
■Scope3の算定およびSBT認証取得の検討。
■サステナビリティ調達の検討。
■脱炭素に資する製品の開発・提供。
★★
★★
★★
物理的リスク 急性 異常気象の激甚化による物理的被害の増加 短期

長期
■台風や洪水の激甚化による自社設備やサプライチェーンへの被害発生。
■製造拠点の操業停止や売上の減少、対応費用の増加。
■事業継続計画(BCP)の見直しと対策強化。 ★★ ★★
区分 項目 事象 時期※3 機会 影響度※4
内容 対策 1.5/2℃
シナリオ
4℃
シナリオ
機会 政策

規制
脱炭素社会に伴う環境測定需要の高まり 中期

長期
■法規制の強化に伴って環境測定の必要性が高まり、ポンプを部品とする測定機器の販売数が増加。 ■環境測定に関連した製品の提供およびアピール。 ★★
技術 燃料電池や二次電池の普及 中期

長期
■燃料電池・二次電池の普及により、製造工程や関連機器内部に使用されるポンプの需要が増加。 ■新エネルギー分野における自社製品の有効性のアピール。
■脱炭素に寄与する製品・新技術の開発。
★★
★★
★★★
再エネ・省エネ技術の普及 中期

長期
■脱炭素社会への移行に伴い、再エネの普及や省エネ技術が発展することにより、その製造過程や機器内部で使用されるポンプの需要が増加。 ■自社製品の省エネ性能の適切な開示。
■省エネ性能に関わる製品・新技術の開発。
★★★ ★★

※3 想定される発生時期について、短期:0~3年、中期:4~10年、長期:11~30年と定義しております。
※4 事業継続または業績に与える影響度について、影響度の大きい順に★★★★~★の4段階で評価しております。

リスク管理

当社では気候変動関連リスクについて、全社より抽出を行い、想定される発生可能性や財務的影響を元に、定性・定量の両面からサステナビリティ委員会にて評価・検討を行ってまいります。

また、サステナビリティ委員会にて特定された気候変動関連リスクについては、その他リスクとともにリスク・コンプライアンス委員会に集約され、相対的な評価を行うとともに、その対応方針や施策の検討を行ってまいります。
検討された内容については、リスク・コンプライアンス委員会の下部にあるリスク・コンプライアンス協議会など各本部長を通じて関連部署へ指示がなされ、その進捗状況はリスク・コンプライアンス委員会が定期的にモニタリングを実施してまいります。

なお、重大なリスクであると判断されたものに関しては、取締役会にてその対応を審議・決議いたします。

指標と目標

当社は、気候変動対応への進捗を管理するための指標として、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を採用しております。
持続可能な社会の実現のために、パリ協定で掲げられた1.5℃目標に沿って、2050年カーボンニュートラルを目指し、中長期的な戦略および施策の検討を行ってまいります。

事業活動におけるGHG排出量(Scope1,2)の削減目標

区分 年度 削減目標
Scope1

Scope2
2030年度 2020年度(2021.3月期)比 50%削減
2050年度 カーボンニュートラル
事業活動におけるGHG排出量(Scope1,2)の削減目標

Scope1,2排出量推移(単位:t-co2)

区分 2020年度(2021.3月期) 2021年度(2022.3月期) 2022年度(2023.3月期) 2023年度(2024.3月期)
Scope1 273 279 315 308
Scope2 2,002 1,805 1,577 835
合計 2,275 2,084 1,892 1,143

Scope1:自社での燃料の使用などによる直接排出
Scope2:他社から供給された電気などの使用に伴う間接排出